たんぽ・きりたんぽのイラスト

11月11日は「きりたんぽの日」──発祥の地・鹿角市で受け継がれる味と誇り

2025年10月14日

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秋田の郷土料理といえば、真っ先に思い浮かぶのが「きりたんぽ鍋」。その発祥の地が、実はここ鹿角市です。
毎年11月11日は「きりたんぽの日」とされ、鹿角市では秋の風物詩として「きりたんぽ発祥まつり」が開催されます。

この日は、地元の生産者や飲食店が一堂に集まり、炭火で香ばしく焼かれるきりたんぽの香りが市街地に漂います。地元の人にとってはもちろん、観光客にとっても、鹿角の秋を象徴するあたたかな風景となっています。


きりたんぽのルーツ──狩猟とともに生まれた知恵の料理

鹿角市が「きりたんぽ発祥の地」といわれる背景には、この地域が古くから狩猟と林業が盛んだったことが関係しています。山籠りの際、持参した米をつぶして棒に巻き、囲炉裏や焚き火で焼いたのがきりたんぽの始まりだとされています。

炭火で焼かれた香ばしい香り、表面のパリッとした食感、中のもっちりとした米の甘み──厳しい冬を生き抜くための知恵が、今の郷土料理として受け継がれているのです。


鹿角の「きりたんぽ発祥まつり」──地元の誇りを味わう

鹿角市では毎年秋、発祥の地を祝う「きりたんぽ発祥まつり」が道の駅かづの(あんとらあ)を会場に開催されます。
鹿角市「きりたんぽ発祥まつり」公式案内

「きりたんぽの日」にあわせて開催されるこのイベントは、観光客だけでなく、県内外からの帰省者や地元の子どもたちにも親しまれており、まち全体が香ばしい香りと笑顔に包まれます。

お隣の大館市でも「きりたんぽまつり」が行われますが、鹿角の祭りは“発祥の地”としての誇りを大切にしており、より伝統色の強い行事として位置づけられています。


大館と鹿角──「きりたんぽ文化」の現在地

一方で、きりたんぽの生産量や加工食品としての流通量では、大館市が優位に立っています。スーパーやお土産売り場で見かけるパッケージ製品の多くが大館産で、全国的にもその名が知られています。

しかし、「作り、焼き、食べる」という体験型の文化や、手づくりの伝統を今も残している点では、鹿角市ならではの温かみがあります。

鹿角では家庭で作るきりたんぽが「特別な日のおもてなし料理」として位置づけられている家庭も多く、日常的に食卓に並ぶものではないかもしれません。だからこそ、来客時にきりたんぽ鍋を振る舞うことは、心を込めたおもてなしの証なのです。


家庭で受け継がれる「ご馳走」としてのきりたんぽ

鹿角市の多くの家庭では、きりたんぽを一から作ることは少なくなりました。それは、つくる手間がかかることに加え、家族が揃う機会が減った現代の生活スタイルも影響しています。

しかし、地域の高齢者に話を聞くと、「子どもや孫が帰ってくる時には、やっぱりきりたんぽ鍋を作る」という方も多いです。

比内地鶏の出汁とごぼうの香り、せりのほろ苦さ、きりたんぽのもちもち感──それらが一体となって広がる味わいは、まさに“鹿角のふるさとの味”。 家庭の食卓で、囲炉裏を囲むような温もりを感じさせる料理です。


これからの鹿角きりたんぽ文化

現在、鹿角市では「きりたんぽ発祥の地」をもっと広く知ってもらうため、地域の飲食店や観光施設でもきりたんぽメニューの提供が増えています。

また、地元の高校生や飲食事業者が協力して行う体験イベントもあり、「焼きたてたんぽづくり体験」は観光客に人気です。

こうした取り組みは、ただ伝統を守るだけでなく、「味わいながら学ぶ鹿角の食文化」として新たな魅力を発信しています。

鹿角の山々に囲まれた冬の風景の中、湯気を立てるきりたんぽ鍋を囲む時間──それは、訪れた人の心を温め、記憶に残る特別な体験となることでしょう。


まとめ:鹿角が誇る、心まで温まる郷土の味

「きりたんぽ」は、ただの郷土料理ではありません。鹿角市にとってそれは、自然とともに生きてきた人々の知恵であり、家族の絆を象徴する食文化です。

発祥の地としての誇りを胸に、鹿角の人々は今日も炭火を囲み、一本一本丁寧に焼き上げます。 11月11日「きりたんぽの日」にあわせて鹿角を訪れれば、香ばしい香りと笑顔、そして伝統のぬくもりに包まれることでしょう。

※本記事は、地域イベント「しごとーーい かづの」の関連情報として、鹿角の地元資源を紹介するコラムの一環として掲載しています。