
秋田の中でもなぜ“鹿角”?|あえて選ばれる地方都市になるために
2025年7月12日
「地方に住むなら、どこを選ぶ?」──そんな問いのなかで、秋田県という選択肢を考える人は多くありません。ましてや、そのなかの一都市「鹿角(かづの)」となると、地図で正確に場所を言える人も少ないかもしれません。
けれど実は、秋田県鹿角市には、“知名度では測れない確かな魅力”があります。
本記事では、「なぜあえて鹿角なのか?」をテーマに、地域に根づいた文化や風土、暮らしの輪郭を描きながら、鹿角というまちが持つ独自の価値を紐解いていきます。
“端っこ”ではなく“入り口”──北東北をつなぐ鹿角の地理的な立ち位置
鹿角市は、秋田県の北東部。岩手県・青森県との県境に接する位置にあります。地図上では“秋田の端”に見えるかもしれませんが、実際には東北3県をゆるやかにつなぐ交差点のような存在です。
十和田湖・八幡平・奥入瀬渓流など、自然資源に囲まれたこの地域は、もともと人の往来が盛んだった場所。旅の途中で立ち寄ることができる立地という点でも、「開かれた山間地」といえるでしょう。
道の駅あんとらあと、旅の途中に立ち寄りたくなるまち
鹿角の市街地にある「道の駅かづの あんとらあ」は、鹿角の魅力を一堂に体感できる拠点です。ユネスコ無形文化遺産・花輪ばやしの展示施設や、地域特産の加工品・農産物・かづの牛関連商品などが並び、“立ち寄り”から“興味をもって深く知る”へと自然に誘導してくれる空間になっています。
観光地らしいにぎやかさはないけれど、じっくり歩いてみたくなる、素朴さと人の手のぬくもりが感じられる場所です。
“静かな暮らし”の中に、芯のある文化が根づく
鹿角といえば、毎年8月に開催される「花輪ばやし」が有名です。10数台の豪華な屋台が町を練り歩き、囃子の音が夜通し響き渡るこの祭りは、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
また、5,000年以上前の縄文時代からこの地に人が暮らしていた証として、「大湯ストーンサークル(大湯環状列石)」も世界文化遺産に登録されました。
こうした文化資源があるということは、鹿角が“人が集まり、暮らしを営んできた場所”であることの証でもあります。いずれも「誰かが守ってきた」歴史が今に続いているという点で、まちの芯の強さを感じさせます。
教育と地域がつながる実践──しごとーーいかづの という取り組み
「しごとーーいかづの」は、地域の子どもたちが鹿角で実際に働く大人たちから仕事を学ぶ体験型イベントです。開催時期は年度によって異なりますが、地域の事業者が参加し、子どもと大人が一緒に“働く”を考える機会として注目を集めています。
この取り組みの背景には、「大人の仕事を地域で開く」「子どもが“地域で生きていくこと”を自分ごとにする」という意識があります。地方創生やキャリア教育という文脈で語られることもありますが、それ以上に、まちの人たちが地域の未来に向き合っている証といえるでしょう。
自然は“観光資源”ではなく、すぐそばにある日常
鹿角には、派手な観光アクティビティこそ多くありませんが、暮らしと自然がほどよく重なっているのが特徴です。
たとえば、市内を流れる湯瀬渓谷には、地元の人がふらりと散歩するための遊歩道が整備され、四季折々の景色を楽しむことができます。また、尾去沢鉱山跡地のように歴史的価値と自然体験を融合させたスポットも存在します。
鹿角の自然は、観光で消費されるものではなく、暮らしの背景として共にある。そうした関係性が、移住後の“心地よさ”につながっているのです。
“派手さ”はない。けれど、長く住む理由があるまち
都市部と比べて、鹿角には「大きな開発」や「新しさ」はありません。けれどその代わりに、丁寧に受け継がれてきた営みがあります。
道の駅で売られている味噌や漬物の味、祭りに向けた準備を何ヶ月もかけて行う地域の人たちの姿、子どもたちが地域の仕事に触れる姿──それらの一つひとつが、このまちに住む意味を与えてくれます。
おわりに──“選ばれる地方”の条件は、案外シンプルなのかもしれない
知名度が高いこと、利便性が高いこと、再開発で注目を浴びていること──それらは確かに一時的な魅力にはなります。
けれど、長く住む・関わるという視点に立ったとき、本当に必要なのは「静かだけど確かな地域」ではないでしょうか。
鹿角は、そんなまちのひとつです。
※本記事は、地域イベント「しごとーーい かづの」の関連情報として、鹿角の地元資源を紹介するコラムの一環として掲載しています。