大湯ストーンサークルのイラスト

世界遺産・大湯ストーンサークル|縄文の記憶が残るまち、鹿角

2025年7月10日

鹿角市には、遥か5,000年の時を超えて今も息づく「縄文時代」の記憶があります。それが、大湯ストーンサークル(大湯環状列石)です。

大湯ストーンサークルとは?

大湯ストーンサークルは、秋田県鹿角市十和田大湯に位置する縄文時代後期(約4,000年前)の遺跡です。地元では「野中堂遺跡」「万座遺跡」としても知られ、それぞれの環状列石(サークル)は、直径40メートル前後の巨大な構造を持ちます。

この遺跡群は、2019年に「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一部としてユネスコ世界文化遺産に登録され、国内外から注目を集める存在となりました。

石を並べるだけでなく、火を使った祭祀、共同生活の痕跡、精緻な土器や土偶も出土しており、縄文人の精神性・芸術性・生活文化が詰まった場所といえます。

なぜここに、これほど壮大な遺跡が?

なぜ鹿角の地に、このようなスケールの環状列石が残されたのか──それには、この地域の自然条件人々の暮らしの知恵が関係しています。

  • 十和田湖・奥入瀬渓流・八幡平など、豊かな山水に囲まれた地形
  • 狩猟・採集に適した森林資源と安定した食料供給
  • 火山活動で形成された地層により、良質な石材が豊富だったこと

こうした環境のもと、縄文人たちは「集い」「祈り」「共に暮らす」という営みを続け、その集大成がストーンサークルという形で今に残されているのです。

ストーンサークルから感じる、“鹿角らしさ”

この遺跡を訪れると、ただの観光地ではなく、人と自然が共生していた原点に立ち返るような感覚があります。

整備された見学路、展示資料館、そしてガイドによる丁寧な説明──それらを通じて、鹿角の地に根づく「自然を尊び、共に生きる」という精神が伝わってきます。

これは、現代の私たちが抱える都市化や孤立の問題に対して、ある種のヒントを与えてくれる存在でもあります。

観光だけでなく、学びと感じる場所へ

大湯ストーンサークルは、単なる「石の並び」ではありません。

季節ごとに表情を変える自然、地元の方々による保存活動、近隣の温泉や郷土料理との組み合わせによって、五感で縄文を感じる体験が可能です。

また、周辺の大湯温泉郷では、ゆったりと滞在しながら「縄文の地に暮らす」という視点で旅を楽しむ方も増えています。

鹿角市の新たな顔として──次世代に伝えたい場所

「花輪ばやし」が躍動する今の鹿角の文化ならば、大湯ストーンサークルは“時を越えた文化”です。

その存在は、鹿角というまちが単なる地方都市ではなく、1万年以上にわたる人の営みを蓄積してきた地であることを私たちに教えてくれます。

移住を考える人にとっても、「自然と歴史に抱かれる暮らし」がここにある──そんな実感を得られる場所ではないでしょうか。

おわりに

世界遺産に登録されたことで、ようやく広く知られるようになった大湯ストーンサークル。しかし、その本質的な価値は、鹿角の土地が持つ“時間の厚み”にあります。

ぜひ一度、この場所を通して「鹿角」というまちの奥行きに触れてみてください。きっと、あなたの中に新しい視点が芽生えるはずです。

※本記事は、地域イベント「しごとーーい かづの」の関連情報として、鹿角の地元資源を紹介するコラムの一環として掲載しています。