クマと共生する鹿角市についてのイラスト

鹿角市で増えるクマ被害──最新の出没状況と対策、熊肉ジビエ文化まで

2025年9月20日

秋田県鹿角市では、ここ数年クマの出没が急増しており、農作物や人身への被害が社会問題となっています。県の「ツキノワグマ情報」によると、令和7年9月には鹿角市八幡平坂比平地区で人身事故が発生しました。秋田県は9月1日から10月31日を「秋のクマ事故防止強化期間」と定め、特に警戒を呼びかけています。

また、クマ目撃情報を共有できるシステム「クマダス」でも、鹿角市内での出没情報が多数確認されています。農地周辺や民家近くにまで出てくるケースもあり、住民の生活圏との距離が急速に縮まっています。

被害の具体例とその深刻さ

クマによる被害は大きく分けて「農作物被害」と「人身事故」に分類されます。鹿角市ではりんご園や畑が荒らされる被害が増えており、特に果樹園では収穫前の果実が食べられるなど深刻な影響が出ています。ドングリや栗の不作が重なると、クマが食料を求めて人里に降りてくる頻度が高まる傾向があります。

人身被害も発生しており、山林での草刈りや山菜採りの際に遭遇して負傷する事故が過去にも報告されています。県の資料によれば、クマに襲われた際には軽傷から重症まで幅広い被害があり、場合によっては命の危険に至るケースもあります。

秋田県・鹿角市で進むクマ対策

鹿角市を含む秋田県では、クマ被害を防ぐために様々な取り組みが行われています。

  • 事故防止強化期間の実施──9月から10月の出没が多い時期に集中して注意喚起を行い、住民に遭遇防止を呼びかけています。
  • 情報共有システムの活用──「クマダス」で目撃情報を即時共有し、住民や自治体が迅速に警戒できる仕組みを整備。
  • 電気柵や防護柵の設置──果樹園や畑をクマから守るため、電気柵の導入が進んでいます。
  • 音による予防──山林や農地作業時に鈴やラジオを携行し、クマに人の存在を知らせることが推奨されています。
  • 猟友会との連携──秋田県猟友会と協力し、出没時の対応や駆除活動を実施。県議会では猟友会支援や弾薬費補助も議論されています。

猟友会と熊肉ジビエ文化

鹿角市周辺では、捕獲したクマを「ジビエ」として有効活用する取り組みも注目されています。秋田県議会では熊肉の流通を可能にする食肉加工施設の整備が検討されており、地域資源の活用として期待されています。

熊肉は独特の風味がありますが、適切に処理することで臭みが抑えられ、赤身の旨味が強調されます。鍋料理や味噌仕立ての煮込み料理などに向いており、知人の猟友会員から分けてもらった熊肉を食べたときには、その滋味深さに驚かされました。地元民としてはたまにおすそ分けでいただく熊肉は、地元で採れる山菜と合わせて煮込み料理にしたり、新鮮な野菜と合わせて炒めたりと調理方法も慣れたもの。罠や猟銃の資格を取得し、自身で捌く人も多いんです。まさに「山の恵み」を感じさせる食材です。

ただし、熊肉の利用には放射性物質検査や衛生管理が必要であり、安全に流通させるための仕組みづくりが今後の課題となっています。

住民ができる身近なクマ対策

鹿角市の住民が日常的にできる対策としては、以下のようなものがあります。

  • 畑や果樹園に廃棄果実を残さない
  • 家庭ごみを屋外に放置せず、クマを引き寄せない
  • 山菜採りや山での作業時に鈴・ラジオを携行する
  • クマの目撃情報を「クマダス」や自治体を通じて共有する

こうした小さな積み重ねが、クマ被害を減らす大きな力になります。

まとめ──人と自然の共存を目指して

秋田県鹿角市におけるクマ被害は、農業・住民生活・観光に大きな影響を与えています。今後もクマ出没は続くと予想されるため、住民・猟友会・自治体が協力して対策を進めることが不可欠です。

熊肉を活用したジビエ文化や防護柵の整備など、クマを「脅威」としてだけでなく「地域資源」として捉える試みも始まっています。自然豊かな鹿角市だからこそ、人とクマが共存できる未来を模索していくことが求められています。

※本記事は、地域イベント「しごとーーい かづの」の関連情報として、鹿角の地元資源を紹介するコラムの一環として掲載しています。