秋田・鹿角が育む日本酒文化 ― ちょっと知っておきたい「チトセザカリ」の魅力
2026年2月7日
秋田県鹿角(かづの)市は、奥羽山脈や八幡平山麓に抱かれた美しい自然が広がり、厳しい冬の寒さと清冽な水に恵まれた東北の地です。
この土地には、古くから稲作文化が根付き、清酒を育む気候風土が整うとともに、地域の人々の暮らしと共に発展してきた酒蔵が数多く存在します。
なかでも千歳盛酒造株式会社が醸す「チトセザカリ(千歳盛)」は、鹿角ならではの風土と歴史を酒に映し出す優れた日本酒ブランドとして、多くの日本酒愛好家から注目されています。
創業から150年余り ― 地元に根ざす酒蔵の歩み
「千歳盛酒造株式会社」は**1872年(明治5年)**に創業し、約150年もの間、鹿角の地で日本酒づくりを続けてきました。
創業当初は地元で親しまれる日常酒を中心に仕込んでいましたが、時代を経るごとに品質と酒質を高め、地域を越えて愛されるブランドへと成長しました。
蔵元は厳しい気候風土を活かし、冷涼な環境で低温発酵を重視した丁寧な酒造りを行っています。
蔵名にもなっている「千歳盛」は、長寿や繁栄、永続性を意味する言葉として、創業者の願いが込められた名前です。
酒名に込められたこの思いは、今日まで変わらず、地元の人々に愛される酒として受け継がれています。
地元・秋田の米と酵母から生まれる個性
「チトセザカリ」の日本酒は、秋田県産の酒造好適米、特に「秋田酒こまち」を使用することが多く、さらに地元で開発された酵母「AKITA雪国酵母」を組み合わせることで、清らかで豊かな香りと奥行きのある味わいを実現しています。
原料米の質の高さと、発酵技術へのこだわりが成分のバランスを整え、心地よい香味と飲みごたえを生み出すのです。
特に代表的なラインナップとして知られる純米吟醸酒「純米吟醸 絹色(きぬいろ)」は、リンゴやメロンを思わせるフルーティな吟醸香と柔らかな味わいが特長です。
精米歩合55%にまで磨かれた米と、AKITA雪国酵母の相性が、爽やかで豊かな香味を引き出しています。
また、純米大吟醸酒「純米大吟醸 緑色(みどりいろ)」は、さらに高い精米歩合(40%)まで磨いた酒造好適米を使用し、上品で繊細な香味とキレの良さを兼ね備えています。
2024年にはフランスの「Kura Master」コンテスト純米大吟醸部門で金賞を受賞するなど、国際的な評価も高まっています。
地域性を映す酒 ― 伝統と革新の両立
鹿角市は「きりたんぽ発祥の地」としても知られ、地域の食文化が今なお息づいています。
「チトセザカリ」は、そうした郷土料理や季節の行事とともに楽しむ酒として、地域の食卓に寄り添ってきました。
秋田の郷土料理であるきりたんぽ鍋や、山菜、川魚などと合わせることで、食材の旨味と日本酒の香味が見事に調和します。
「千歳盛酒造」では、伝統的な定番酒を大切にしつつ、古代米を使った酒や、精米歩合を変えた挑戦的な酒づくりなど新しい試みも積極的に行っています。
精米歩合91%とほとんど磨かない米で醸す低精白純米酒など、酒造りの常識に挑戦する姿勢も、地域の日本酒文化を豊かにするひとつの試みと言えるでしょう。
地元と世界をつなぐ酒として
「チトセザカリ」は、鹿角というローカルの風土に根ざしながら、現代の多様な味覚にも応える酒として評価されています。
国内外のコンテストでの受賞歴が示すように、その品質は世界の日本酒市場でも認められつつあり、海外の愛好家からの注目も高まっています。
日本酒は単なるアルコール飲料ではありません。
米と水、酵母と人の手によって生まれる「風土の表現」であり、地域の歴史や文化を感じることができる飲み物です。
「チトセザカリ」を味わうことは、鹿角という地の四季や人々の暮らしに思いを馳せることでもあります。
これから日本酒を知りたい方、深く味わいたい方にも、「千歳盛」の一本はきっと新しい発見と感動を与えてくれることでしょう。
秋田の自然が育んだ日本酒、「チトセザカリ」。
その一滴一滴に、鹿角の空気や水の清らかさ、そして蔵人たちの誇りが凝縮されています。
※本記事は、地域イベント「しごとーーい かづの」の関連情報として、鹿角の地元資源を紹介するコラムの一環として掲載しています。