たんぽ・きりたんぽのイラスト

「たんぽ」と「きりたんぽ」|鹿角に根づく本物の郷土食文化

2025年7月15日

“きりたんぽ”は全国区。でも、“たんぽ”を知っていますか?

「きりたんぽ鍋」と聞いて、多くの方が秋田県の郷土料理を思い浮かべるかもしれません。
しかし実は、秋田県北部の鹿角(かづの)市では「たんぽ」と呼ばれる文化が根強く残っています。
本来、「たんぽ」とは、炊いたご飯を半つぶしにして杉の棒に巻きつけ、囲炉裏や炭火で香ばしく焼いたもの。これを切って鍋に入れると「きりたんぽ」になります。

たんぽ作りは、鹿角の秋冬の風物詩

鹿角では、昔から新米の収穫を祝う行事や冬支度の一環として、家族や地域で「たんぽ作り」が行われてきました。
子どもからお年寄りまでが集まり、もち網で焼いたごはんをすりこぎでつぶし、手で握って棒に巻く──その一連の手仕事が“年中行事”として親しまれていたのです。

一般的には一人あたり1〜2本のたんぽを作りますが、来客が多い時期やお祝いの席では10本以上を焼く家庭もあり、香ばしい匂いが集落全体に広がる光景も日常でした。

「きりたんぽ鍋」は“切ったたんぽ”を使う料理

「きりたんぽ」という言葉は、読んで字のごとく「切ったたんぽ」を意味します。
焼き上げたたんぽを1.5cm程度の厚さに斜め切りし、鶏だしと醤油ベースのつゆに、せり・ごぼう・まいたけ・ねぎ・比内地鶏などと一緒に煮込むのが伝統的な食べ方です。

特に鹿角では、せりやまいたけが入手しやすいことから、「鍋そのものの風味」に地の素材の魅力が反映されやすく、地元の方が作る鍋は「観光地で食べる味」とはまた異なる“素朴で滋味深い”ものです。

家庭ごとの味と手仕事の継承

たんぽやきりたんぽ鍋は、各家庭で微妙に味つけや具材が異なるのも魅力のひとつです。
昔ながらの「炭火焼き」にこだわる家庭もあれば、フライパンやオーブンで簡易的に焼く家もあります。
くるみ味噌を塗って焼く“味噌たんぽ” “味噌つけたんぽ”や、焼きたんぽをそのまま食べる“スナック的なスタイル”も地域によって存在しています。

鹿角で“本物のたんぽ”に出会うには

「道の駅かづの あんとらあ」では、冬場を中心に地元食材と一緒に本格的なたんぽ鍋を味わうことができます。
また、地域の直売所や物産館では、冷凍された手作りたんぽや、手作り用のたんぽ棒も販売されており、家庭でも体験が可能です。

毎年、地域の学校では「たんぽ作り体験」を授業に取り入れているところもあり、地元の子どもたちは自然とその作り方や意味を学びながら成長していきます。

まとめ──“きりたんぽ”のルーツに出会う旅

「たんぽ」を知ることで、「きりたんぽ」が単なる“名物料理”ではなく、地域に根ざした暮らしの一部であることが見えてきます。
鹿角に訪れた際は、ぜひ「きりたんぽ鍋」だけでなく、その原点である「たんぽ作り」にも目を向けてみてください。
土地の人が日々大切にしてきた手仕事の温もりに、きっと心動かされるはずです。

※お隣の「大館市」と発祥の地で争ってるお話は後日。

※本記事は、地域イベント「しごとーーい かづの」の関連情報として、鹿角の地元資源を紹介するコラムの一環として掲載しています。